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正しい投資情報はメディアでは得られない

正しい投資情報はメディアでは得られない

「信じたいこと」より「正しい」知識を

いつの時代にも「投資」に対する誤った情報に流されてしまう方はいるものです。ただそれは金融機関の人間が顧客との知識や情報格差を利用して、顧客を仲間騙すような形がほとんどでした。しかし今懸念しているのは、「影響力のある素人」の情報に流されてしまう人がたくさんいることです。インスタグラムやyoutube、ブログなどで情報を集められる方も多いでしょう。私も旅行先の参考にしたりはしますが、投資に関しては残念ながら参考にすべき水準には達していないように思います。
私もインスタグラムやyoutube、ブログのコンテンツ作りをしたりしている人に話を聞くこともあるのである程度発信側の見てもらうための工夫もわかるのですが、「極力シンプルに」、「仮想敵をつくって相手を一方的に非難する」、そして人の「自分にとって都合の良い情報を信じたい」という心理を狙って、正しい情報よりも、「見る人が正しいと思いたい情報」を発信する傾向にあるのです。

大衆向けの発信は、重要なこともそぎ落とされている

不特定多数の方向けの発信、特にインスタグラムやyoutube、ブログのように見る人が多ければ多いほど良い媒体においては、見る人たちの中で最も初心者の人向けにコンテンツが作られることも多くあります。シンプルにわかりやすく解説してくれているのはありがたいことなのですが、シンプルにするのには限界もあるし、弊害もあります。初心者の人にもわかりやすいほどシンプルにすると、重要な情報がごっそりそぎ落とされたり、内容が極端になったりします。苦笑してしまうのは、ほとんどの発信者が「この人も実は詳しくはわかってないんだろうな」という人たちであることです。
代表的な都市伝説を参考に、ご紹介しましょう。

「米国株しか勝たん」ブーム

最たるブームが米国株神話でしょう。事実過去はすごかったのですが、今後もそうなる保証はありません。投資に関して危険な行為の一つは過去の実績のみに焦点を当て、今後も同じ傾向が続くだろうと判断することです。
確かに過去の米国株式市場のパフォーマンスは素晴らしいものでした。S&P500で見ると、1983年1月21日から2022年1月21日までのの年平均リターンは9%程度で推移しています。預けたお金が8年で倍になる計算ですから、銀行預金の感覚で見たら信じられないような成績でしょう。だからと言って、今後も米国株式だけに投資していればよいという保証はありません。過去の実績が素晴らしいほど目が曇りがちですが、過去は事実ではあっても、将来を保証するものではありません。

覇権は移り変わっている

200年前であれば、大英帝国にとって代わる国があらわれるなど誰も想像しなかったでしょう。世界の3分の1は大英帝国の植民地だったのですから。
あの時代にyoutuberがいたら、東インド会社に投資することを声高々に勧めていたでしょう。
またMSCI world index、世界の株式市場の代表的な指数であり、日経平均やTOPIXの世界版だと思っていただくとイメージつきやすいかと思いますが、30数年前、全体の40%近くが日本株でした。時価総額世界一がNTTの時代です。「Japan as NO1」という言葉を聞いたことがある方もいるかと思います。これが現在70%程度が米国株になっているのです。30年以上前は、日本でも共産主義革命が飽きてしまうのではないかと真剣に心配していた人も多くいるでしょうから、本当に数十年でトレンドは変わるのです。

「実(じつ)」をしっかり見る

華々しい実績には目が曇りがちですし、メディアで文字や映像になるとうっかり信じてしまいますが、中身、「実」をみて判断しなくてはなりません。いくつかの事実に焦点を当てて、イメージとのギャップを見てみましょう。

①株価上昇率上位の企業は米国企業?

意外なことですが、キャピタル・ぐろーぷの調査によると、年間の株価上昇率の上位50社のうち、大半は米国企業ではありません。2013年から見ると、一番多い年で上位50社中24社、少ない時では3社しかありません。ちなみに昨年2022年は20社でした。米国株だけに投資をしていたら、その他の国に属する須原いい企業の稼ぎ出した豊富な利益を享受できなかったことになります。
米国株の代表的な指数であるS&P500ですが、GAFAM、つまりGoogle、Apple、Facebook(Meta)、Amazon、Microsoftを除くと、東証株価指数と変わらないというデータもあります。たまたま爆発的にけん引する企業が米国で生まれただけなのです。

②なぜ米国株は派手に上昇したのか

上昇率状に企業に意外と米国企業が少ないのに、なぜ華々しいパフォーマンスが出ているのでしょうか?
それは米国と他の先進国では、伸びた企業のぞくするセクター(業種)が違うからです。
米国以外の先進国では素材、金融機関、エネルギーや生活必需品など、「オールド・エコノミー」と言われる伝統的な産業が伸びていました。こういった産業は大きくは伸びづらいのが特徴です。
それに対して米国ではコミュニケーション、ヘルスケア、情報技術など新しく伸びしろ豊富な分野が上昇しています。
この成長した産業の差が伸び率の差となって出たのです。

投資先に重要なのは地域やセクターではなく「企業のチカラ」

皆さんは子供に「いい絵本を買ってあげたい」と考えたとき、はじめからアメリカ人の作家に絞って絵本を探すでしょうか?おそらく国籍に関係なく名作を探されるでしょう。
またITバブル(ドット・コムバブル)の時、ITセクターが空前のブームとなりました。IT連銘柄が
企業のファンダメンタルズ、簡単に言うと「企業のチカラ」、実力・実態に関係なく上昇し、猫の缶詰を作っている会社が社名に「.com」とつけただけでIT関連銘柄と勘違いされて株価が何倍にもなったという事例もありました。
当たり前のことですが、会社がどの国にあるか、どの業界に属しているかは関係ないのです。
その企業が利益を上げ続けられるか、利益が拡大するのか、それはマーケットや業界ではなく、経営者のビジョンや人材、参入書壁の高い商材やサービスを持っているかどうか、財務面、経営基盤は盤石かどうか、が大切なのです。

誰にでも当てはまる投資方法はない

米国株を否定しているわけではありません。米国企業には世界第一位の経済大国で商売がスタートできるという強みがあり、内需の強さが国内売り上げに大きく関係することは容易に想像できます。魅力的な投資対象であることは間違いありません。
ただ米国株式だけに投資をすることはリスクがあります。日本にも欧州にも投資して、初めて米国株式の強みも生きてくるのです。
もし日本株式ファンドだけに投資をしている人がいたら、その人には「米国株式ファンドも買っておきましょう」とアドバイスしますが、すでにVTI(米国の上場株式をほぼカバーしたインデックスファンド)を買っている人に「S&P500インデックスも買いましょう」とは言いません。youtuberやブロガーなど視聴数目的で発信する人は金融のプロではないので、過去の実績だけでいいか悪いかを判断しますが、投資の本質とはかけ離れていると言わざるを得ません。