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景気後退局面をどう乗り切るのか?

景気後退局面をどう乗り切るのか?

景気後退局面をどう乗り切るのか?

いよいよ米国の株式市場も下がり始めました。米国の主だった大企業の業績はアナリストの予想平均(コンセンサス)を上回っていたにも関わらず、株価が下落しました。通常は株価が上がる局面にも関わらずです。これは投資家たちがついに景気後退が始まったと判断したことを示しています。景気後退に入ると不安に思われる方も多くいらっしゃるかと思いますが、一言に景気後退といってもいろんな形があります。
今回はその4つの型についてみていきましょう。

①景気循環型

まず一つ目は景気循環型です。経済は人間と同じでバイオリズムのようなものがあります。
消費が活発になり始めると、企業はその需要に応えるべく生産活動を拡大します。消費が活発になり、企業の生産活動がまだ追い付いていない段階では、需要に対して供給が少ないため、物価が高くなっていきます。販売価格が高くなり、生産した分売れていれば、企業の業績もよくなり、株価が上がっていきます。これが景気回復の流れです。ところがどこかの段階で、売れる分より企業の生産活動が上回ってしまい、在庫を抱えるようになります。企業は在庫ロスをなくすために価格を下げて販売します。当然安売りするので企業の利益は減ってしまいます。それでも在庫がはけないと、さらに企業業績は悪化していき、株価は下がり景気後退に入ります。需給のバランスが整うまで、景気後退は続きます。とても自然な流れですね。こいった景気循環の局面としての景気後退はあまり怖がる必要はありません。景気後退のそこも浅く、一年程度など短期で回復することがほとんどです。

②イベント型

次はイベント型景気後退です。新型コロナショックがわかりやすい例です。企業の業績の実態よりも先行きの不安が先行し、株価が下がるタイプです。マーケットが恐怖に支配され、本来売られないはずの銘柄も売られて、株式相場が下がっていく局面です。大きく相場が下がる局面というのは、全銘柄下がるという共通点があります。理屈ではなく投資家の心理で売られるからです。今回の景気後退はイベント型ではないでしょう。ただきっかけはコロナです。コロナで低迷した経済を立て直すために、各国中央銀行が大規模な金融緩和を実施し、市場が金余りの状態になり、消費が活発になって在庫が追い付かず、物価が急上昇しました。あとは上記の景気循環となるわけです。このタイプも、起きたイベントのショックが相当長引かない限り、すぐに比較的短期で回復していく傾向にあります。

③地域限定型

次は地域限定型の景気後退です。日本のバブル崩壊や、アジア通貨危機、ギリシャ危機、チャイナショックなどが代表例です。特定の地域で大規模な景気後退が発生し、その影響が周辺に波及する現象です。紛争など地政学的なリスクが元で起きることもあります。これは完全に、地域の経済規模や他国との貿易規模などによって影響の規模は様々です。ギリシャの債務問題で全世界が恐慌になることはあり得ませんが、震源地がアメリカであれば、全世界に影響が及びます。「戦史」で有名なツキディデスが述べたように、「大国の利害の影響はその領域内だけにとどまらない」ということです。リーマン・ショックが引き金となった世界金融危機がまさしくそうです。この世界金融危機が起きた原因こそ、最も警戒すべき暴落となりますのでそれは下段で述べます。

④金融システム崩壊型

大暴落を巻き起こし、その影響が長引く厄介なのがこの金融システム崩壊型の景気後退です。バランスシートの崩壊によって引き起こされます。
例えば、本来の価値が1000万円の不動産があるとしましょう。今その不動産のある国の経済は絶好調で、不動産以外の物価もどんどん上がっているとします。当然不動産の価格も上がっていくわけですが、実用的な用途であれば問題ありません。ところがこれを投機目的で取引する人たちが出てきます。1000万の不動産を1100万円で買い、それを1200万で売って儲けるわけです。不動産バブルの始まりです。1100万円で前の人が買った不動産を、1200万円で買う人の目的は何でしょうか?それは1300万円で買ってくれる人に売って儲けたいと考えているからです。そしてこの不動産を1300万円で買う人の目的は、1400万円で買ってくれる人に売って儲けたいからです。こうやって「買えば上がって売ればもうかる」という流れが根拠なく起き、「船に乗り遅れるな!」とブームになって過熱していきます。みな自分より馬鹿な人がもっと高く買ってくれるときたしして不動産を買います。「より馬鹿理論」といいます。最終的に1000万円だった不動産が3000万円になっていたとします。でもこんなことは続くわけありません。何かがきっかけで、イケイケムードに水が差され、次買ってくれる人がいなくなります。そうすると一気に不安が広がり、手元の不動産を処分したいと売却に動きますが、何せ本来は1000万円の不動産ですから、そこまで下がるまで買い手など現れません。最終的に1000万円で売れたとしても2000万円の損が出ます。ここで問題になるのが、借り入れをして不動産を買っていた場合です。すぐに3100万円で売れると思っていたため、長く返済する記などなく3000万円のローンを組んで不動産を購入しています。そうすると2000万円を返済する手がなく、銀行の不動産ローン債権が焦げ付きます。一度信用創造によって生み出された3000万円のうち、2000万円がぱっと消滅するのです。これが全国とんでもない規模で発生すると、巨額のマネーが神隠しにあうため、経済が大混乱に陥ります。これが金融システム崩壊型の簡単な仕組みです。この景気後退のそこは深く、影響も数年に及びます。

今回の景気後退は?

さて今回の景気後退ですが、いまのところ金融システム崩壊型の景気後退ではありません。後退局面には入り、確かに下落幅でいえば、S&P500で年初来20%以上の下落となり、リーマンショック以来の下げ幅ですが、そんなに心配はいらないと思います。早くて来年にも回復するのではないかとの見方もありますが、長いとITバブルの崩壊の時3年下がり続けるということがありました。3年は最悪覚悟すべきということです。ただ長期投資家にとっては、上がり続けるより、時々下がることが歓迎すべき局面となります。なにせ本来価値のある企業の株まで、根拠なく下がりバーゲンセールとなっているのですから。追加で投資資金を投入したり、積み立てを続ける効果が発揮されるときです。株価が上がり続けていると、毎月積み立てていても高い価格で買い続けることになってしまいます。時々下がることが歓迎すべきといったのはこういう意味です。

景気後退の型を知り、長期投資をぶれずに続ける

いかがでしたでしょうか?
長期投資家にはそもそも今の株価がどうとか、景気の浮揚は関係ありません。ただやはり続けているうちに不安になることはあると思います。景気後退の型を知り、現在がどの状況に当てはまるかを予想できれば、乗り切るモチベーションになると思います。
そして「Return Reversal」、つまり株価は下落したら必ず反発して上昇すること、株価とは短期的には投資家の心理に左右されるが、長期的には企業の利益に連動することを忘れないでください。もっと稼ぎたい、もっと豊かになりたいという人の欲があり、企業活動が続く限り、上場企業の長期的な利益成長は続き、株価上昇も連動していくことが腹に落ちていれば、景気後退など全く怖くないのです。